「何かにたっぷりと時間をかけるのは最も洗練された形での復讐

というフレーズをご存じでしょうか。これは村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」という小説にでてくる一節です。

なんども読み返した小説なのですが、このフレーズは「これでもか」というくらいの赤線が引かれています。気になった文章はごりごりと色鉛筆で線を引く習慣があるのです。

どういう意味なのでしょうね。復讐、という言葉が強烈で妙に印象に残ります。

21世紀に生きる我々は、「早さ」という概念に対して変更を迫られている気がします。早く作っても、早く処理しても、その結果が雑であれば見向きもされない、ということです。

なぜか。たくさんものがあふれるようになって、生産過剰になっているからです。

私は小さい頃から要領がいい方で、自分で言うのもなんですが、ものごとに対しての飲み込みの早いほうでした。しかし、何でも早く雑にこなしてしまう癖がついているせいで、技術が深まっていかない、という重大な欠点を持っています。
合気道の稽古では、この器用貧乏が徒になります。雑にこなしているうちにうまくなるだろう、という頭でやってきたのですが、やはりそうはなりません。とにかく早く、雑にこなしているうちにだんだんと下手になっていく、という現象が起こるのです。ここで、大きな転換が期待されているのは言うまでもありません。

時間をかける。ゆっくりと丁寧にやる。丁寧に物事に当たるとき、それが成就するとき確かに不適な、不遜な気持ちになることがあります。

「これだけ時間をかけて、しっかりとやるべきことをやった。誰にも邪魔されなかった。ざまあ見ろ」。

さて、誰に対して復讐した気になるのでしょうか。

物語が始まる以前まで遡って、「物語が始まる起源」を探る。そのためには当然今の物語の外へでる必要がある。外へ出るためには、場所が必要となる。自分の井戸を見付ける。

バガボンドでも、小次郎は言葉をしゃべりません。それは自分の起源を探り、外から物語を語るための方便なのでしょうか。

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日付:2009/11/07 00:04

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